スイス国立銀行(SNB)では4月7日の欧州中央銀行(ECB)の利上げがきっかけとなり、次回6月16日会合で利上げを行う可能性が出てきた。(SNBの政策決定会合は3カ月に1度(年4回)しか開催されないため、次回の会合は6月となる)
スイスでは永世中立国という立場から、地政学的リスクが高まった時の資金の避難先としてスイス・フランが買われる。例えば、2001年に米国で起きた同時多発テロ事件(9.11テロ)や、2003年のイラク戦争開戦時などである。
その後もスイス・フラン買い基調は続き、2011年に入りUSD/CHFでは0.90スイス・フラン台を割り込み0.86スイス・フラン台半ばまで下落し、EUR/CHFでも1.24スイス・フラン台前半まで大幅下落、ともに史上最安値(スイス・フラン高)を付けるに至った。
昨年、SNBは同国の輸出産業を助けるためにユーロ買い介入を実施したが、スイス・フラン高の抑制に効果は見られなかった。スイス・フラン高の影響を受ける輸出業者はスイス当局を非難しているが、SNBは2010年1月から4月までで400億スイス・フラン ( 約3兆5000億円 ) 相当のユーロを購入した。今年の3月には、日本の東日本大震災を受け、USD/CHFが0.8854スイス・フランまで下落(フラン高)した。SNBはスイス・フラン売り介入を実施しても目立った効果を得られなかったが、ECBが金融政策の転換を図り、2008年7月以来となる利上げを実施したことでEUR/CHFは1.31スイス・フラン台前後まで戻し、USD/CHFでも0.91スイス・フラン台まで戻した。
スイス国内では景気の回復や堅調な個人消費、そして不動産市場の好調さも加わり、2009年3月以来0.00-0.75%の低水準に据え置かれている政策金利の利上げの可能性が指摘されている。スイスの金利先物では9月の利上げを完全に織り込み、更に6月の利上げも織り込み始めている。スイス・フラン高がECBの利上げをきっかけに落ち着けば、国内経済の強さを背景とした利上げが見込める。
ただ利上げに踏み切れない理由があり、「通貨高」である。スイス・フランは主要通貨に対し上昇傾向を続け、USD/CHFは今年4月に0.8669スイス・フランの最安値(フラン高)を記録し、EUR/CHFでも昨年12月に1.2401スイス・フランの最安値(フラン高)を記録後、1.29スイス・フラン台前半の低水準で推移している。(ともにFX業者の参考Bid値で計算)金利引き上げは企業の借り入れコストの負担となり、また輸出国であるスイス経済の低下を招きかねない。
同国の良好な経済と通貨高の狭間で、利上げ時期を模索していると思われる。
